不動産屋を長くやってると驚くような事件に遭遇する事が良くあります。大なり小なりありますが今日は小のお話を一つしましょうか。とある日、二人の男性が弊社を訪れました。メガネのモッサリした感じの男とマスクをしているもっさりモサオより若干若そうなリュックの男。

話を聞くとどうやらモサオは弊社で管理している賃貸物件の入居者様のようです。本日はどうなさいましたか~?と伺うと「今日部屋を解約したいので鍵持ってきました」と。う~ん、皆様は解約予告、をご存じだろうが一応ご説明します。

借主は賃貸借契約を更新しない場合は退去する日の1カ月前にオーナーへ通知しないといけません。逆にオーナーから退去依頼をするには6カ月前と言うのが一般的なルールです。それは賃貸契約書にもしっかり明記しており宅地建物取引主任者(取引士)から説明を受け、納得した上で記名押印します。

西片さん:え、えーとお客様、賃貸契約書にも書いてあるのですが一ヶ月前予告と言うルールがありましてですね、退去するひと月前にオーナーさんに連絡しないと翌月分家賃や日割り家賃が掛かってしまうんですよ、ほら、家主も新しい入居者さんを募集する期間とか掃除の準備とかもあるでしょ?

モサオ:す、すみません、専門的な事を言われても良く分かりません。僕は素人なので・・・。

西片さん:えぇ、それも勿論分かりますよ、契約書って皆さん良く読まないですからね。重要事項説明書を読み合わせて説明していても真面目に聞いている人の方が少ないですから~、覚えていなかったりすることは多いです、はい。

でもですね、こういう風に忘れちゃわない様に契約書や重要事項説明書と言う物をワザワザ作成して声を出して読んで説明するのです。そして何よりあなたは契約時に30歳と言う成人した大人ですよね?しかも天下のT大に在学中なんですから僕の言っている意味、理解は出来ますよね?

モサオ:あ、ですからさっきも言いましたが僕は素人なんで意味が良く分からないんですよ…。

西片さん:はぁ~?!(さすがに温厚な西片さんも少し声の張りが良くなってきた!)あのですね、これは僕が言ってるのではなくてオーナー様のご意思なんですよ、通常通りに処理をしてくれって、ウチは管理を任されてるので粛々とルールに従い処理するのが仕事なんですよ。ご理解くださいなっ。ん~、ポリポリ、連帯保証人さんに相談するしかないなぁ~。

リュックマスク・・・。(後ろに座ってるリュックマスク)がボソボソとモサオに呟いてる。「僕たちは間違ってないんだから大丈夫だよ」グッと拳を握りモサオの背中を押す。

モサオ:し、素人なんで・・・。

西片さん:と言う訳で大変申し上げにくいのですが、コレは大人のルールですから約束は守って貰わないとウチも困ってしまうんですよ、ご理解頂けますよね?社会のルール知ってますか?コンビニで物盗ったら捕まりますよね?これ常識ですがわかりますよね?あなたはそれが分からないと同じ事を言ってるんですよ?

モサオ:・・・。(うつむいたまま一枚のメモ紙を取りだした)こ、こ、この人とお話して頂けませんか?

西片さん:はぁ、別に僕は構いませんけど、間違ったことは何一つ言ってませんし契約書にも不備はないのでいくらでもお話して差し上げます。えーっと、携帯番号かっ、080-××〇〇-ぷっ!クククククッ~‼‼‼僕は笑いを堪えるのに必死だった。ヒザの辺りを激しくつねって笑いを押し殺した、ぷるぷる…。走り書きされていたメモにはこう書かれていた。                      「弱いものの見方、正義の味方 M田」

西片さん:えっ、こ、これ、誰っすか?なんすかこれ?ギャグっすか?

モサオ:こ、、困っている人とか弱い者の悩みとか相談に乗ってくれている人なんです。

西片さん:は、はぁ、まいっか。取り敢えず話してみますよ。掛けますよ?・・・PuPuPu~

M田:ハイもしもし~?M田ですけどぉ、(声の感じは60歳位の男性)

西片さん:あ、私は西片さんと申しますが、実はですね、こうこうこう言った事情でモサオさんが弊社に来られてまして、M田さんに連絡する様に言われたのですが、M田さんはモサオさんの件はご存知ですよね?

M田:えぇ、聞いてますよ~。ほら、彼はさあぁ、32歳で今も大学院に通ってるから社会人経験が乏しいんだよね~、こう言ったルールとかよく理解してないから、研究ばかりしてるんで社会のルールとか疎いんだよねぇ。分かるでしょ?お金も無いみたいだしさぁ~。

西片さん:まぁそれは分からなくもないですが、契約書等も不備はないですし大人のお約束ですからちゃんと守らないとイケない事は理解されてますよね?私の言っている事は間違ってますか?

M田:いやぁ~、仰る通りですよね、貴殿は何も間違ってませんよ。それは分かるんだけどさ、私も相談を受けたからには言わして貰わないとねぇ、ここはひとつお願いしますよ、彼は社会を知らないんだよね、可哀想でしょ?

西片さん:え、えっとその前に失礼ですがM田さんは、えーっと、せ、正義の味方?どう言ったご関係と言うかご職業の方でいらっしゃいますか?(怖い人だったら嫌なので・・・。)

M田:あぁ、私わですね、KS党の者でして、こういう相談を良く受けているんですよ~。

西片さん:・・・。なんだ、、?デジャブ?そう言えば以前にもこういう事があったなぁ、それは知り合いの不動産業者が私道所有者と通行の件で揉めている時の話だった。その私道所有者さんが同じ党員の方の名前を出して来ていたのを思い出したわ。その後裁判でズルズル何年も戦っていた。どちらが良い悪い、裁判の行方はココでは明記しないでおく。

私はKS党さんに恨みもつらみも御座いませんが、揉め事の時には良く耳にする党だなぁ~と。

そんなこんなで結局は敷金の日割精算で済ませてあげました。ガチガチに戦ってもオーナー側が余裕で勝つのでしょうが、そこまでする事でもない、とのご判断でしたのでこれで手打ちじゃ。結果的にモサオ側は数万円ですが得をしたことになる。世の中ゴネ得で良いのか?言ったもん勝ちか?おたくT大で経済学を学んで院まで行ってんだから自分が間違った事言ってるのは分かってますよね?

我々は正義の味方ではなくただの仲介業者だ、オーナーがそれで良いと言えばその判断に従うのみ。キッチリ仕事をこなすだけだ。釈然としないがそう言った処理をした。世の中は理不尽な事は山ほどある。まぁ、ネタを提供してくれたんだし、これはこれでいいか(笑)皆様はそんな事は言わないですよね?大人ですから・・・。

と言う事で本日もお読み頂き感謝です。

明日は「銀行にはお金がない?」です。お楽しみに~♪

田港 晋

 

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